日々読み続けるyutorisutoのひとりごと


by yutorisuto
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カテゴリ:歴史・経済小説( 8 )

「 照柿 」 高村薫 著 1994.7.15 株式会社講談社

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兄弟同様に育った男2人、
それぞれに複雑な過去を背負い警視庁の刑事と鉄工所の労働者として
今も背中に重いものを背負って、18年ぶりに出会う。
ここから悲劇の最終章に向かって物語が進行していく情景を描いた大作である。

作者はサスペンスものを得意とする女流作家。
日本推理作家協会賞や直木賞を受賞している実力派である。

しかしこの作品に限っては(?)、他作品にみられる歯切れの良い文章や
情景描写が影をひそめているようだ。
登場人物の心の状態を表現する情景の描写に色彩が使われているのだが、私にはもう一つピンと来ない。冗長な表現になっているように思える。

「照柿」は殺人事件の「血」の色を表しているようであるが、よくわからない作品である。
またいつもはち密で大胆な構想と表現力を持つこの作家らしくなく、大阪生まれにしては、たとえば「環状線」の内回り・外回りがま逆になっていたり、「都島区」が「大正区と「福島区」の隣に引っ越したりといった杜撰さである。

私は、この著者のものとしてはあまりお勧めできない作品・・・・。



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「 殺人も 殺すほうには 理屈あり 」



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by yutorisuto | 2015-06-22 14:16 | 歴史・経済小説
「 秀吉神話をくつがえす 」 藤田達生 著 2007.9.20 講談社現代新書

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「豊臣秀吉」は今でも大阪では「大阪城」とともに「太閤はん」と親しまれ、人気が
高い。(その分。割をくって徳川家康は悪役イメージで人気がない)

ぞうり取りから一軍の将へ、信長の死後は重臣筆頭から天下人へ、秀吉の姿は下克上
の戦国時代を代表するヒーローであった。
その輝かしくも痛快な一代記は秀吉の存命中から、お伽衆の大村由子が著した
「天正記」などの豊公能によって形作られ、死後「太閤記」などの作品や太閤記物と
呼ばれる浄瑠璃や歌舞伎などによって語り継がれてきた。
明治維新以降は庶民の英雄から一転、大陸進出を目指す「軍国主義の象徴」として
教育現場などにおいてももてはやされた。
戦後の平和国家日本では、その天下統一事業が戦国の世を終わらせるためのものだと
「平和の実践者」へと大転換を遂げる。

秀吉神話は彼の持つ(作られた)イメージの底抜けの明るさから、現在にいたるまで
庶民から支持され続けている。

しかし著者は秀吉の天真爛漫な笑顔の下に隠された実像は、
1.自らの権力欲のためには手段を選ばず、非常な謀略でライバルたちを次々と
  蹴落としていった策士であった。
2.本能寺の変をあらかじめ想定していた可能性がある。(中国大返し)
3.権力を手にしてからは信長に劣らぬ残虐行為を行った
4.民衆に対しては過酷な圧制を敷く独裁者だった

この本を読んだあとあなたの秀吉イメージは変わるでしょうか?




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「 ヒーローも 裏から見れば 策略家 」





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by yutorisuto | 2015-06-03 14:30 | 歴史・経済小説
「日本人ルーツの謎を解く」 長浜浩明 著 2010.5.27 展転社


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著者は東京工業大学大学院卒業後、設計会社で35年余にわたり、
東京駅八重洲口をはじめとして、200余件に及ぶ建物の空調・衛生設備設計に従事した技術者である。
その合い間(?)に「文型ウソ社会の研究「古代日本{謎}の時代を解き明かす」 「脱原発論を論破する」などの著書がある多才なひとである。

この本では、日本人のルーツは朝鮮半島にあり、
「弥生時代」は米つくりとともに半島から人口の大量流入があり、
縄文人を従えて支配層を形成したという常識に対して
南方から島伝いにやってきた人々がルーツであり、
逆に一部は九州から半島に進出したとする考えからその論拠を展開している。

「水田稲作」「年代測定法・炭素14年代」「古墳」「DNA人類進化学」「Y染色体}などを検証しながら、朝鮮人ルーツ説を否定していく。

私が一番納得したのは、「日本語」である。
日本語は独自の言語体系を持つ独立した言語であるという。
弥生人が半島人の大量流入によって成立したとすれば、今の日本語はなく、朝鮮語に近いものに待っていたのではないかという私の今までの疑問が氷解したことである。

染色体の話などよく分からない部分もあるが、
日本人ルーツ論の常識を覆すひとつの主張として大変面白い読み物である。



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「 日本語は 独自の言葉 大切に 」




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by yutorisuto | 2015-05-19 15:04 | 歴史・経済小説
「本能寺の変 431年目の真実」」明智憲三郎 著 2013.12.15 文芸社文庫

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「時は今 雨の下しる 五月かな」 
「敵は本能寺にあり」、明智光秀が謀反により織田信長を討った「本能寺の変」はあまりにも有名だ。
謀反の理由として「暴君信長に虐げられていた」 「中国攻めの秀吉の配下に突くことを命じられた」 「光秀自身の天下人への野望」などが歴史上、定説となっている。

光秀の直系の子孫である著者が、この定説に真っ向から挑戦した力作である。
著者によれば、定説は天下人になった「秀吉」が後になって、都合のいいように書き改めたものであるとのこと。

現存する資料を読み解く「歴史捜査」の手法によって導かれるその真実は?
答えはやっぱり本書を読んでからのお楽しみにとっておきますが、結論は私達の歴史上の常識からは、全くかけ離れたものになっており、歴史好きにはたまらなく面白い読み物である。

歴史的に正しいかどうかは別として・・・・



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「 家康は 待つだけの人でない 果敢さも 」



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by yutorisuto | 2015-05-15 13:00 | 歴史・経済小説

「 一茶 」 藤沢周平 著 2009.4.文春文庫


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「痩蛙 まけるな 一茶 是にあり」

「やれ打つな 蠅が手を摺り 足をする」

一茶といえば善良な目を持ち、小動物にも優しい心配りを忘れない好々爺の俳人というイメージが強いのですが、著者は江戸時代の底辺を生きた俳諧師の複雑な顔を描き切っている。

信濃の貧しい農家に生まれ、長男ながら継母との折り合いが悪く、おさなくして江戸に奉公に出される。
奉公先を飛び出した後は、生業につくことなく、俳諧という世界に飛び込み、江戸では一人前とは認められず、地方の富裕層に寄生するように何とか生計の道としていた。
あきらめて故郷へかえり、義弟との遺産争いでは、あくどい手段を使ってまでも遺産の半分を取り上げ、落ち着くことになる。

一茶は「あるときは欲望をむき出しにして恥じない俗物であり、貧しくあわれな暮らしも、
句の中で誇張して見せ、自分のみにくさをかばう自己弁護もわすれないしたたかな人間」であった。
だが「その彼は、またまぎれもない詩人」だったのである。

生涯に2万句を詠んだといわれる一茶の俗物ぶりと非凡な俳人ぶりをみて、「松尾芭蕉」の自然に溶け込んだ世界とは全く異なる「一茶」の世界もまた俳句なんだと、私たちに教えてくれる小説である。


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「 俗物の 一茶負けるな 応援す  」






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by yutorisuto | 2014-03-01 14:57 | 歴史・経済小説
「 女信長 」 佐藤賢一 著  2006.6.30  毎日新聞社



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「織田信長は女だった だからこそ時代の最先端をいき、歴史はかくの如く動いたのだ」

「織田信秀」はその娘「御長」を「信長」として、織田家を継がせた。
男は「戦」をするものであり、男に任せていては、何時まで経っても戦争のない世の中はつくれない。
「信長」は女の発想で、「天下布武」に立ち上がる。
時には「御長」として、女であることを武器として使いながら一直線に天下人に駆け上がった「信長」も、50歳を過ぎて男を演じ続けることに倦んできた。

そんな折、「羽柴秀吉」の謀反を機に「本能寺」で役割の交代を画し「明智光秀」に殺害された
ことにして、「信長」から「御長」に戻る。
「光秀」と「御長」は「徳川家康」に庇護されて、天寿を全うする。

「本能寺」に「信長」の首がなかったという話を誠にうまく説明できる筋立てであり、女信長は本当に面白い着想である。

歴史好きにはたまらない「歴史小説」である。





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「 信長は 女性ゆえの 癇癪(かんしゃく)か 」








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by yutorisuto | 2013-12-05 14:12 | 歴史・経済小説
「 女帝 わが名は則天武后 」 山 颯(シャン・サ)著 2006.6.27 ㈱草思社


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中国4千年の歴史上、唯一の女帝・則天武后は平民の生まれにもかかわらず、広大な帝国「唐」の第3代皇帝・高宗の皇后にまで上り詰め、その死後には皇帝となり、80歳で死ぬまで、帝位に君臨した。
権力を得、長生きをしたがゆえに、愛を手に入れ、翻弄され、時には強権を振るい、そして孤独にさいなまれた「神に選ばれた」一人の女性の愛と孤独をつづった一代記。
人として最高の地位にまで上った人生の「はかなさ」を感じさせる作品である。

著者は北京生まれだが、天安門事件後の1990年、17歳で渡仏し、この本もフランス語で書かれたものの翻訳。




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「 皇帝の 位も悲し、愛がなければ 」









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by yutorisuto | 2013-06-27 13:46 | 歴史・経済小説
「海賊とよばれた男(上・下]」 百田 尚樹 著2012.7.11  講談社



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2013年の「本屋大賞」に選ばれた作品。
この賞は「全国書店員が選んだ、いちばん売りたい本」に与えられるものである。
「歴史経済小説の最高傑作」(西川善文・元三井純友銀行頭取)という評価が帯広告に書かれている。

内容は実在の出光興産の創業者「出光佐三」をモデルにしたというより、
ほぼその事績をたどり、時代の移り変わりのなかで、明治生まれの主人公の頑固で、人間味豊かで、権力におもねることのない生きざまが描かれている。
全編を通じて軍部・GHQ・業界団体・監督官庁などに対する戦いの連続である。

作者は元人気テレビ番組の構成作家という経歴からか、その情景が目に浮かぶような平易で視覚的な文章で、非常に読みやすく楽しい作品となっている。

特に後半のタンカー「日章丸」がイギリス軍の目をかいくぐってイランの石油を取りに行って
持ち帰る場面はハラハラ、ドキドキさせられ、感動させられる。

実際の「出光佐三」は、昭和56年、95歳の長寿を全うして没しているが、
その残した「出光興産」は創業以来の『人間尊重』という考えを事業を通じて実践し、広く社会で期待され信頼される企業となることをめざして、今も頑張っているようです。



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「 権力に 屈せず石油の 道一筋に 」




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by yutorisuto | 2013-06-06 14:23 | 歴史・経済小説